AI動画生成で映画は作れるのか?1分の予告編で試してみた件

自主制作映像「MOMOTATO’s SUN」予告編が完成しました。

BGMも含め、素材のほとんどをAIで生成しながら、人の手での編集や演出をしっかりと加えて制作した、映画予告編仕立ての約1分の映像です。

実はこの作品、2024年に一度つくったもののリメイクで、当時とはツールも仕上がりも大きく変わりました。本記事では、制作を通じて感じたこと、AIの現在地について考察していきます。

AI動画だってコンセプトは人間が考える

まずは動画をご覧いただけましたら幸いです。

AIが、これまでつくれなかったものを実現してくれる

通常業務の合間にじわじわと進めていたのですが、まとめて作業したら制作期間は1週間かからないくらいでしょうか。

全てをAIで仕上げることには固執せず、「AIの助けを借りて、想像しても作れなかったものを実現する」というのを制作コンセプトとしながら、トーン調整の仕上げや、AIではつくり込めない文字演出などは人の手で作業しています。

構成のコンセプト

どんな動画にしようかなというのは人間が考えなければいけないところで、AIの表現力をサクッと検証しようというところから、誰もが知る昔話をAIで実写のように映像化したらどうなるかを試してみようというのが出発点でした。

とはいえただの実写化ではつまらないので、途中までは原作通りながら、予想外の展開をするという仕掛けを盛り込んでいます。

鬼退治に向かった桃太郎がいざ鬼と対峙すると、退治するどころか恋に落ちてしまう。やがて二人の間に子供が生まれ、置いてけぼりにされた犬・雉・猿がモンスター化して立ちはだかる。誰が被害者で誰が裏切者なのか、桃太郎と鬼の息子がモンスターと対決する場面でタイトルが出て終幕。

二転三転するどんでん返しや入れ子構造のシナリオが映画が好きなので、短い尺の中にそういう構造を詰め込んでみました。加えて、炎や水といった自然現象、美女、巨大モンスター、アクションなど、映像としての見せ場になる要素がAIで出力できるものかの検証にもなっています。

AI動画生成、2年間の進化

ちなみに2024年版はこちらになります。

この頃は驚きましたし、今でもいい画づくりだなぁと感心するカットもありますが、全体的な画質やクオリティ、破綻の多さは見劣りするところが多く、この2年間の進化を実感します。

ツールの選定は2年間で大幅に変化

テキストでイメージを伝え、静止画生成で詰めていって、絵が決まったら動画生成で動かすというフローは変わらずですが、この時は、ChatGPT、Midjourney、Runway Gen-2を中心に制作しました。今回はほぼ全てのツールが入れ替わっています。

英訳プロンプト作成:Claude
画像生成:Google Flow(Nanobanana Pro)
ビデオ生成:Higgsfield(Seedance)/Kling
音楽/歌詞生成:Suno AI

ツール選定に関しては、意図的に刷新したというより、各サービスが追いつけ追い越せで進化しているので、いま良さそうなもの(かつコストに見合うもの)を選んで組み合わせております。ほんの数日で形勢が逆転するということも日常茶飯事なAI業界、これがベストな選択かというと断言は難しいのですが、シーンによっては複数のツールで出してみたりして、一番良い感じに出たものを採用していたりします。

各ツールの詳しい解説や使い分けは、長くなりそうなので別の記事で記載いたします。

生成AI動画の進化を実感した部分

2年前は「面白い試みだね」という段階で、作品として残すにはクオリティが足りなかった気がします。今回は、美しいカットが増え、リアルさが増し、破綻も減り、作品として成立するものになってきたという手応えがありました。

とくに大きかったのは、キャラクターの一貫性を保てるようになったこと。キャラクターの3面図を生成して、それを参照素材として使うことで、複数カットに渡り同じ人物として認識できる映像が作れるようになった。実はちょうど旧作を仕上げたタイミングで出始めた機能でしたが、月日を経てかなり安定してきた気がします。

音楽も、2024年版の楽曲をリミックス機能でプロンプト調整し再出力したら、曲の骨格はそのままにクオリティが上がり、ツールの進化に驚愕しました。

桃太郎のデザイン3面図

各キャラクターはこのような3面図を作成して参照させ、デザインを固定させています。

AIが苦手とする領域とは

一方で、まだAIが苦手とする面もわかってきました。多くは自然現象や、非現実的な現象、抑えた表現を描かせる際に破綻が多かった印象です。

たとえば「桃が川をこちらに流れてくる」。言葉にすれば簡単ですが、生成すると桃がその場から動かなかったり、水面を転がってきたり、奇妙な挙動が多く出てくる。最終的には「水がこちらに流れてくるのに合わせて、水面の桃もこちらに移動してくる」と、物理現象を分解した動きとして伝えることでようやく不自然に見えない動きが出てきました。

他にも、桃を割ったら赤ちゃんが出きたり、巨大な動物が現れるなどの現実にはありえない場面や、わざとらしくなく抑えめだけどちょっとオチとなるようなコミカルで間抜けな一目惚れの表情など、微妙なニュアンスの表現ほど指示の試行錯誤や偶然性に頼るガチャが必要でした。

動画生成の難しさは、画像と違って部分的な修正ができないこと(だんだんレタッチも可能になってきていますが未だ低品質)。毎回全体が変わるので、「ここだけ直したいけど、この動きの良さはもう出ないかもしれない」という判断が何度もありました。プロンプトを尽くした上で、偶然に委ねる部分がどうしても残る。映画監督がリテイクかOKかを判断するのと、似た感覚かもしれません。

ちなみに、Higgsfieldなどは厳しいNSFWのコンテンツ審査基準に引っかかって生成できないシーンも多く、桃から生まれる裸の赤ちゃん、おくるみに包まれた赤ちゃん(身体欠損と勘違いされた?)、猿のキャラクターまでNGになったときは、桃太郎が成立しないかもしれないと焦りました。

勘のいいクリエイターたちとチームで作っている感覚

モンスター3体が登場するシーンからラストのバトルまでは、イメージ通りの画を出して動きをつけるまでの流れがうまくハマりました。グラフィックの段階で丁寧にプロンプトを調整し、それを素材に動画を生成する。その一連のサイクルがかみ合ったとき、「いただきました!」というカットが出てくる。

どのカットも漠然としたイメージを伝えると、だいたいイマイチな画から始まります。そこから、日本語でClaudeと相談しながらイメージや修正方向を言語化して、長い英文プロンプトに変換してくれて、生成ツールで指示してみて、また指示を調整して…。イメージを伝える過程は、まさに人間相手のコミュニケーションとかなり似てきました。「指示が刺さる」というか、我が意を得たりという回答が返ってくることも多く、勘のいいクリエイターたちとチームで作っている感覚に近いものがあります。

どの画も、ディレクションを重ねることで確実にクオリティが上がっていく。その過程で、自分の感覚やイマジネーションの存在意義を感じられたのも嬉しく、正直ホッとした面もありました。

構図にダイナミックさがなくイマイチなAI生成画像

猿のモンスターと対峙する最終カットも、ディレクション前はAI感満載。

生成AI動画の「現在地」

発展途上の現在地を知る

私も以前、映画をつくってみたいなぁと考えたことがあります。AIで映画は作れるのか。その問いが、このプロジェクトの根っこにありました。

結論として、かなりその可能性に肉薄していると感じます。ただし、まだ発展途上であることも事実です。

生成した映像は短くトリミングすればごまかせるものの、長いカットではまだ動きが破綻することがある。解像感も実写に迫るとまでは言えません。仮にいま2時間の映像を作っても、1〜2年後には未熟に感じてしまいそうな気もしました。

だからこそ、「完全にAIで作ること」自体にはこだわっていません。今回も文字は3DCGで作り、カラーコレクションや動画編集は人間の手で行っています。AIを使って、人間だけでは予算や期間の制約で作れなかったものを作れるようになる。どこまでできるようになっているか、AIの現在地を確かめる。その姿勢で取り組んでいます。

人間の担う役割とは

何をつくろう、どうあるべきという「適切な願望を持つこと」と、仕上がってきたものを「判断し、責任を持つこと」。これがやはり人間が担うことから逃げられない部分と感じます。

ツールがどれだけ進化しても、そこからよりクオリティを上げる方策がないものかを探り、ここらが落としどころだなと決断する、これは従来の映像制作と何も変わりません。AIの時代も、それに勝るイマジネーションでしっかりリードできるかどうか。それが、人間のクリエイターとしての生死を分けるのだと思います。

imagenicでは、AIも様々に活用している制作会社として、こうした知見を日々蓄積しながら、クライアントワークへの活用も進めています。

「AIを使った映像に興味がある」「何ができるのか知りたい」という方は、お気軽にご相談ください。

 

続編記事はこちら↓
JOURNAL生成AI映像制作方法の解説と2026年版おすすめツール紹介

 

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Jun 6, 2026 | Category:journal



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